終章 八月二十一日

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  「辛かったね」 栄助の慰めの言葉に「いや」と討魔は首を横に振った。 「オレよりも伊坂が一番辛いと思う」 立て続けに友達を日常から失い、しかもその原因がどちらも討魔にある。 それなのに伊坂は討魔を恨まない。文句の一つでも言いたいだろうに、一言も言わずに胸の中に閉まっている。 そんな伊坂のことを考えたら「辛いのは自分なんかではなく伊坂なのだろう」と討魔は思っていた。 (……伊坂の支えになってほしいと、影宮に頼んでみるか) アイツなら何とかしてくれるだろう、と考えていると 「討魔、何か良いことでもあったのかい?」 いきなり栄助がそう訊いてきた。 「何故そんなことを訊く?」 わけが分からない討魔は首を傾げた。
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