終章 八月二十一日

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  「そうだ。あの日は確か……今日とは違う、激しい雨が降っていたな」 物思いにふけっているのか、討魔は前屈みになった。その様子を影宮は黙って見詰めていた。 「………何から聞きたい?」 「え?」 突然の質問に対して意味が分からなかった影宮は首を傾げた。 「玲奈の話だ。聞きたいんだろう?何から聞きたいんだ?」 「え、えっと……じゃあ、二人の出会いから全部」 分かった、と返事を返した討魔は咳払いをした。 「オレと玲奈が出会ったのは……五年前のクリスマスの日だった」 その言葉で討魔の話は始まる。 物語の速度は止まる。 そして進み出すのは『炎の祓魔師』の過去。 ひどく喜悦的で 辛く悲嘆的な 喜劇と悲劇の物語。 謎に包まれていた過去の舞台は、静謐(セイヒツ)にその幕を上げるのだった。 to be continued.
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