サンクチュアリ

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生まれたての小鹿のように歩いていく彼女の後をついていった。やっぱり打ち所が悪かったのかな。 「…高校生さんですか?」 「そうです」 「…お若いのですね…」 「いやぁ、お姉さんと然程変わりませんよ」 「お世辞が…上手いのですね……制服は…学生さんの特権ですよね…」 「制服は良いですよね~」 「ふふ……」 「イヒヒ……」 なんなんだろう、この空間は。 「あ……図書館は六時で閉館になってしまいます。…急ぎましょうか…」 「あ、はい~」 ホラー映画に出てきそう。 腕時計を見ると五時半を指していた。 そして、先ほどより少しだけ加速した彼女は息切れが激しくなっている。 「大丈夫ですか」 「ごめんなさい……中々運動をしないものですから…早歩きすらもつらくて……」 「借りる本はもう決まってるのでゆっくりでも大丈夫ですよ」 「す…すみません……」 酸素を取り込む彼女。そんな死にそうな勢いなんだ…。 「お姉さんはよく図書館に行かれるんですか~?」 「はい…本は好きなので……」 「そんな感じがします」
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