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「そうなんですか…お使いですね……」
「そうなんです~」
不気味にふふ…と笑うと彼女は髪をかきあげた。長髪のせいで後ろにいた私の目に突き刺さる。
「ア゛」
「ア゛?……あらやだ…!すみません…!」すみません、すみません、と彼女は謝ることを止めない。
「だ…大丈夫です……」
私も石ぶつけちゃったし。これでお互い様だ。
「私って本当…ダメで……」
「お姉さん…」
「普通の人は……こんな長い髪をかきあげたら……後ろの方に迷惑がかかることくらい分かりますよね…」
「い、いや…」
「それも分からないだなんて…私は……」
「え、あの…」
「人間失格です…」
何もそこまで。
「お姉さん…ネガティブはダメですよ」
「…そうですよね……もっとポジティブに……」
「顔を上げて!」
「はい…!」
彼女は、ふん、と鼻を鳴らすと前にあった石につまづいて転んだ。
*
どことなく懐かしい香りのする図書館は思ったより広く、本を探しだすのが大変そうな場所だった。
私たちの他にはカップルが一組しか居なかったので、静寂な時間が流れている………はずだった。
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