少しだけ、時間を戻して。

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そこには。 誰もいない、静かな空間。 そこで。 「――……」 誰かが、歌を歌っていた。 浮かぶ空よりも透き通った声。 心を突き抜ける声量。 何より、涙を流しそうなほど、哀しい―…切ない、歌詞。 俺は、動けずにいた。 突き動かされて、寄って行くことも。 逃げることさえ出来ずに。 すると、彼は歌い終わったようで大きく息をついた。 そして、こちらに気づく。 「っ!!?」 ずいぶんと驚いた顔をして、爆ぜるように顔を赤く染めた。 「あ、あ、あのっ……さっきの…聞いて…?」 さっきの、というのは歌の事だろうか? はっと気を取り戻し、こくりと頷く。
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