少しだけ、時間を戻して。

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でも。 これだけは、言える。 「歌……上手かったよ」 真っすぐに言うと、そいつは疑うような顔をしてきた。 「……本当に?」 当たり前だ。 これを上手いと言わないんだったら、何を上手いというんだ。 自信満々に俺が頷くと、彼は子供のようにぱぁ、と笑顔を見せた。 「ありがとう」 どき、ん 不意に見せられた笑顔。 心臓が、跳ねた。 そしてまだ五月蝿く高鳴っている。 それは、校舎の中で騒ぐ生徒たちより五月蝿く耳に響いた。
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