紫色の優しい彼。

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時が、止まる。 時が、壊れる。 (……俺の、時間は……?) あの幸せな時間なんて嘘のように掻き消えていた。 そして。 薄く煙が吐き出されているドアの向こう。 硝子を踏んで姿を現れたのは―… 「おっはよー☆」 初音ミク。 と、もう二人。 「派手にやりすぎだよっ!ミク姉っ」 「別に構わねぇだろ?人なんてそんなにいないんだから」 鏡音リン、レン。 その双子だ。 ―…俺は、砂になっていた。 カーテンの隙間から吹かれる微かすぎる風に、さらさらと持って行かれ俺は消えかかる。 するとミクが笑って駆けてくる。 「おはよー会長、がくぽん!」 「お早うございます。ミク殿」 馴れ馴れしくがくぽに触るミク。そのおかげで俺は何とか元の身体を取り戻す。 はっとしてみると肩をばんばんと叩いているではないか。 むぅ、となるが止める術はなく。 黙ってその状況を見ているしかないのが、現実。
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