紫色の優しい彼。

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「……会長殿?」 何も言わない、いや、言おうとしないカイトをがくぽが覗き込む。優しい。 優しすぎる。 時にその優しさは、俺を抉(えぐ)る。 泣き出しそうになるのを、ぐっとこらえる。 背の高いがくぽが俺の顔を覗き込もうとする前に。 「―………けろ」 「え?」 聞き直したがくぽに、ばっと顔を見せ、再び同じ事を今度は叫ぶように言い放つ。 「ミク!リン!レン!!お前らはドアを片付けろ!!」 「「「えぇーーーーっっ!!?」」」 三人の声が重なる。 大声をだしたせいでがくぽはずいぶん驚いた顔をした。 がくぽは俺に手を伸ばしてくる。「会長殿……?」 苛つく。 なんで優しいんだよ、お前。 そっと、心配した手が俺に触れようとした時。 ぱんっ 俺は、その手を払っていた。 僅かながらに払った手は赤くなっている。 それを横目に、俺は歯を食いしばって目を背けた。
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