紫色の優しい彼。

9/9
前へ
/28ページ
次へ
「…んだよ…何なんだよ……!」ぎゅぅ、と手の平を握る。 泣き出さないように。 つん、と痛くなる鼻の奥。 熱くなる、目頭。 その全てが、お前のせいだというのに。 ばっと顔を上げ、きつく睨みつける。 その瞬間、俺は正気に戻った。 がくぽは、酷く、傷ついた顔をしていたのだ。 眉を寄せ、今にも涙を零してしまいそうな。 「――…」 でも。 今更自分のしてしまったことを取り消せるはずがない。 すぐにでも謝ってしまいそうな心を閉じ込め、俺はぼそりと呟く。 「…馬鹿野郎」 そして、ぱきりとなった硝子に目も暮れず、俺は教室を出るため走り去っていた。 走り去っている途中で、がくぽが俺を呼んだ気がしたが俺は気にせずに走り続けた。 だって、抑え切れなくなった涙が、目から溢れていたから―
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加