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あのとき、ああしていればよかった。
なんて考えるのがいかに無意味かなんて、僕は良く知っているはずなのに、それでもそんなことを考えずにはいられないんだ。
あのとき、どう振る舞っていたら、この現状を変えられたのだろう、
って。
◆
だれにもないしょの恋物語
[01]
◆
それは、忘れもしない春のある日。
うららかな日差しに誘われて、僕は近所の公園を散歩していた。
町中にほど近い場所だけれど、適度に自然があるそこを、僕は密かに気に入っていた。
淡い色合いの花や、若々しい鮮やかな緑の草木、不意に目を向ければ、それらは僕の五感を幸せで満たしてくれる。
ねぇ、これを読んでいる君。
たまにでもいいから、外の世界に飛び出してみて欲しいな。
そこには、テレビやゲーム画面では決して味わえないリアルがある。
必ずしも自分に優しい事ばかりではないけれど、素晴らしいものを君に与えてくれるはずだよ。きっとね。
不意に、僕の視界に海が映った。
否。正確には、海色の髪をした青年が、だ。
あらゆるものを包み込むような海色…マリンブルーをしたそれに、不覚にも目を奪われてしまった。
だって、こんな綺麗な青を僕は見たことがなかったから。
やや伏せがちな瞳も、髪と同じ海色。
けれど、こちらの海は全てを飲み込み侵食するようなディープ・ブルー。
その青と、視線が絡まる。
その瞳はガラス玉をはめ込んだように透き通っていて、人というよりは人間を精巧に模した人形のようだった。
けど、なぜだろう?
その視線を僕は、
すこしだけ、恐ろしいと感じたのだ。
今にしてみれば、これは僕の本能の最後通告だったのだろう。
青年は僕を見つめて、にこりと微笑んだ。
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