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バレンタインデーは女の子の為にあるものだと痛感した。もう絶対、こんな危険は犯すまい。 普段通りの大倉が目の前に立ち、腰を上げかけた俺は、もう一度ぺちゃん、と床に尻もちをつくように座り込んだ。俺の人生終わりや、と。裁判所の光景がフラッシュバック。立ったこともない被告人席を、こんなにリアルに受け止めれる人も珍しいんじゃないか。 全然嬉しくないけど。 ふと、大倉は不思議そうな顔をして俺を見る。その視線が僕の手元に移ったとき、やっと気付いた。 あ、チョコレート…。 …最悪。 「いや、…これは、ちゃうねん!全然ちゃうねん!」 立ち上がって後ろに隠す。ああ、バレてもうた?俺の心中、見破られてもうた?不安と恐怖と情けなさ。三十苦にさいなまれる。 もー最後の手段は逃亡や。次に大倉が発する言葉次第で、俺は全速力でこっから逃げ出す決意を固める。幸いにもここは下駄箱。上履き替えれば家に帰れる。鞄なんてどーだっていい。好きにしてくれ。 .
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