1話 なれなれしい男

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「……っち……」 これもいつものこと。 背後からそんな 舌打ちの声が聞こえた。 むかつくなら 話しかけてこなければいいのに。 舌打ちするなら 最初からあたしなんて 無視すればいいのに。 雄司があたしを裏切ったくせに。 それなのに雄司は あたしを見かけるたびに 話しかけてくる。 “よぉ。莉緒。 同じ学校だな。” 入学式の日からそうだった。 きっと雄司はこれからも…… あたしに話しかけてくるんだろう 縁が切れるなら―― とっくの昔に 切れているはずだから。 冷たくあしらわれてさえ 関わろうとしてきた男は ――雄司だけ。 「…………」 あたしには…… 雄司が何を考えてるのか わからない。    
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