1話 なれなれしい男

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――…黒崎? 雄司のこと? クラスの子達は あたしの返事を待ってるようで じーっとあたしの顔を 見つめてくる。 そのことに居心地が 悪くなったあたしは 顔をそらしてコクンと頷いた。 「えーっ…! やっぱそうなんだぁ……」 「噂って本当だったんだねぇ」 一気に皆は散り散りになって 教科書を持ち始める。 ……噂? 噂になってたの? きっとあたしと中学が同じ誰かが 中学時代のあたし達のことを 友達に話したとか――… そんなところだろう。 雄司は中学から 人気者で目立った奴だったから。 あたしはこれ以上 質問漬けにされたくなくて さっさと教室を 出ていこうとした。 「――…でもさぁー」 そんな瞬間に―― 嫌味ったらしい声が響く。 「黒崎君に宮坂さんって つりあってないよねぇ」 「…………」 「黒崎君かっこいいのに。 真実とはいえ、 こんなメガネ女子と 付き合ってたなんて噂流れて。 かわいそ~」 雄司は今でも有名な方。 まぁ、 顔は平均以上だろうし 友達も多い。 だから 雄司に憧れを持ってる女の子も 多いはず。 「なんで黒崎君、 宮坂さんとなんて 付き合ったんだろうね? かっこいい茶髪男子には 古風文学少女は 似合わないと思うなぁ?」 ――…でもね? あんた達よりもきっと―― あたしの方が 雄司のこと知ってる。 あたしは男も嫌いだけど―― 他人をけなす 最低人間はもっと嫌い。 「……あんた見る目ないね。」 「……は?」 「雄司にあんな茶髪は 似合わない。 雄司には黒髪のほうが 似合ってた。」 「な、なに言ってんの? それがなんだってのっ!」 「あんたよりも あたしの方が 雄司のこと知ってるから。 キスの仕方も。 雄司特有のくせも。 ――…全部。」 「――…っ……」    
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