1話 なれなれしい男

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「――…だからさ?」 あたしはその女子を じっとにらんで口を開く。 「勝手にやきもちやいて――… あたしにひがんでる暇があったら 雄司にアタックしたらどう? 雄司今、フリーらしいしね。」 「んなっ……」 図星をつかれたのか どんどん赤くなっていく。 「でも気をつけて? あいつ飽きっぽいし。 浮気性だから。」 実際、 あたしと二股かけてた彼女とまで 別れたんだから。 あたしはそう言い放つと ピシャンと教室のドアを閉めた。 「な…に、あの女! ムカつくーっ!!」 そんな叫び声が 背後から聞こえた。 あたしは別に間違ったこと 言ってない。 「………。 あほらし……」 やっぱりあたしにはめんどくさい 友達とか。 恋愛とか。 高校では…… 全く縁がなさそうだと実感した。 「――…あ。 莉――」 廊下で再び雄司と 目が合ったけど――… あたしに話しかける暇も 与えないくらいに すっと目をそらしてやった。 もうあたしに 話しかけないほうがいいよ。 雄司。 あたしとのかわいそうな噂が 流れてしまうから。 そう心の中で言葉にして。 あたしは雄司の前を 黙って通り過ぎた。    
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