1話 なれなれしい男

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―――――――………… 「なぁ。 爽涼祭、何するよ?」 「……なんでも。」 「やっぱ野外で模擬店? バザーとかでもいいよなぁ。」 「……うん。」 「でも舞台やったら 交流も深まるんじゃね?」 「……うん。」 「…………」 「…………」 「……なぁ。」 「……はい。」 「宮坂さぁ、やる気ない?ある? どっち。」 「ない。」 ここだけは、 すぱっと言い返してやった。 その返答に 桜井君は呆れた顔で あたしを見る。 「即答かよ……。 こりゃ手強いな。」 ――放課後。 教室にはあたしと桜井君だけ。 公平かどうかわからない くじ引きで組長にされたあたしは こうやって居残り作業。 入学早々、夕暮れの教室に お世話になるなんて 思ってもみなかった。 それもこれも全部…… 目の前のこの男のせいだ。 地味に、目立たず 学校生活を送る。 そう思ってたのに―― いきなり組長なんかにされて。 迷惑この上ない。 「なぁ、宮坂。」 「…………」 「なに読んでんの?」 そう言って桜井君は あたしの小説を覗きこんでくる。 「……見ないでよ。」 正直…… ほっといてほしいのが本音。    
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