1話 なれなれしい男

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「んな冷たいこと言うなよなー。 ……あっ。 俺、この小説知ってるぜ?」 そう言って 桜井君はペンを置いて 頬杖をついた。 ……知ってる? まさか。 こんな今どきな男子が 小説なんて読むの? ……絶対嘘だ。 「でたらめ言わないでよ。」 「あ。信じてねぇなー? じゃぁ俺が その話の結末言ってやろうか?」 「……本気?」 「本気。」 「本当に知ってるの?」 「ああ。本当。」 「……やだ。やめて。」 「ははっ」 桜井君はそう笑った。 その後すぐにペンを持って カリカリと書き始める。 候補は模擬店と舞台と……。 なんて、 そんな独り言をもらしながら。 桜井君の髪は 茶髪を超えてオレンジ色に見える きっとそれは夕陽のせいで。 雄司よりも似合うなって…… ぼーっとそんなこと考えてた。 「…………」 あたしの意志ではないとはいえ 組長になっちゃったことは 事実だし。 このまま桜井君1人に まかせてしまうのも 申し訳ない気がしてしまう。 「……お化け屋敷。」 「あ?」 あたしはパタンと小説を閉じて 桜井君を見た。 「お化け屋敷も、いいと思う。」 そう言った瞬間に また桜井君はふっと笑った。    
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