1話 なれなれしい男

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バリア? ……うん。 そうかもしれない。 というより、きっとそう。 だってあたしは――… 「本当は、 組長なんてやりたくなかった」 「…………」 「いろいろ…… めんどくさいから。 関わりたくない。」 あたし、自分で思う。 他人に偉そうに言えないくらい あたしも最低な奴だって。 目の前に桜井君がいるのに 平気でこんな言葉が 言えてしまう。 でも…… 嫌なものは嫌で。 嫌いなものは嫌い。 下手に他人を信じて 傷つけられるのはもう嫌。 それならあたしは 距離を置くことを選ぶ。 「……なんで?」 「は…?」 「なんでめんどくさいんだよ?」 「――……。 あたしは1人でいい。」 「…………」 「だから用がないときは 話しかけないで。 あたしは特に―― 男が大っ嫌いなの」 そう言って あたしは鞄を肩にかけた。 教室のドアを開けて 廊下に一歩出た瞬間に 声が響く。 誰もいない校舎に反響して―― とても耳に響いた言葉。 「お前のそのバリア―― 壊してやるよ。 ……絶対。」    
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