1話 なれなれしい男

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――…そうして。 あたしの新たな日々は始まった。 いつもあたしの周りには 誰にもいなかったのに。 今はもう―― 「莉緒。 お前の案通りお化け屋敷に 決まったんだから。 ちゃっちゃと考えろよ。」 ……提案するんじゃなかった。 気を抜いて言ったあの出し物が 本当に選ばれるなんて。 ……失態。 本当に失態。 「なぁ、莉緒。 聞いてる?」 「…………」 「おい。」 「…………」 「莉緒!!」 「……聞いてる。」 必要以上に この男と関わらなきゃいけない。 しかも、いつからあたしのこと 呼びすてになったの? 「聞いてるなら無視すんなよー。 泣いちゃうぜ? 俺。」 口をとがらせながら 桜井君は言う。 ……泣けばいい。 ていうか、 そんな顔したって可愛くないし。 そう言わないあたしは 精一杯の嫌悪顔で 桜井君を見つめてやった。    
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