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「なぁ。
一個聞いていいか?」
「…………」
無言のあたしの対応にも
慣れたのだろうか。
桜井君はあたしの返事を聞かず
手を伸ばす。
それと一緒に
ぐっと顔も近づいて――。
「……っ…!?」
ドキッとした。
「お前、メガネねぇ方がいいよ。
絶対。」
あたしはメガネを取られ
ぼやっと前がぼやける。
近いと感じたはずの桜井君の顔も
もう見えなくなって。
「ちょっ……
見えない!
返して!」
「わかったわかった。」
そうくすくすと笑いながら
桜井君はあたしにメガネを
かけ直してくれた。
「……うん。
やっぱねぇ方がいい。
絶対。」
「……こ、この世に
“絶対”はないよっ……」
「は?どんな屁理屈だよソレ。」
さっきドキッとしたのは
驚いたから。
急に顔が近づいたから。
そうじゃないと――
ドキッとした意味がわからない。
「ほら、お化け屋敷の配置。
アイデア出せアイデア。」
「………。
なれなれしい……」
そうボソッと呟いた言葉は
彼には
聞こえなかったみたいだった。
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