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――“いい子”
……かいかぶってるよ。
桜井君はあたしのこと
わかってない。
言葉にしないだけで――
あたしが心で何を思ってるのか。
桜井君は知らないから。
「……ふーん。
ま、好きにすれば?
でも、
一つだけ言ってやろうか?」
「なんだよ?」
未だ上から視線を落とす雄司に
桜井君は頬杖をつく。
「こいつには
何も求めねぇほうがいいぜ。
求めるだけ無駄。」
そう言って、
雄司は背を向けて
立ち去ろうとする。
結局――
あたしと雄司の目は
一度も合わないまま。
というより、
あたしが合わないよう
下を向いてたんだけど。
もう終わったと思って
顔を上げた瞬間。
「――じゃぁ黒崎は。」
話はまだ終わってなかった。
桜井君がそう声を上げて
雄司を呼び止める。
……桜井君?
「そう言ったってことは
経験論だろ?
黒崎は――…
莉緒に何を求めてたんだよ?」
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