第1章 エクストラ

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躊躇いなど有り得なかった。 自分の意思など、切り捨てた命と共に置いてきた。 なのに、この少女だけは殺せない。 殺してはいけないと、無くした筈の心が叫ぶ。 「…お前は、いったい…」 敵意の失せたギャザリンが、少女に手を伸ばしかける。 その時、背後に気配。 「隊長、こちらは片付きました。  目標は」 分からない。 自分は何故、こんな事をしている? 「隊…長…?」 気付けば、部下の胸を黒槍で貫いている自分がいた。 そうか… 自分は、守りたいのか。 これまでの全てを捨ててまで、何故、こんなにも救いたいと思うのだろう。 自分が分からない。 だが、既に行動は起こした。 「何なんだろうな?  これは… お前を救えば、その答えが解るのか?」 少女に歩み寄り、左手を差し出す。 「俺が助けてやるよ。  来るか?」 ギャザリンの問いに、少女は満面の笑みを浮かべ、その手を握る。 その笑顔を前に、ギャザリンの表情が綻ぶ。 初めてだった。 心地好い程にその心は穏やかで、迷いが無い。
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