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レジスタンス側も唖然としていた。
切り札である少女がまるで無力な子供の様に、憎むべきダークネスへと身を寄せていた事に。
「…どういう事だ?」
腕に切り傷を負った頭に角のある亜人、カリストが呟く。
「隊長!」
目前の狼の亜人を無視し、クロイツがギャザリンの前に、一足で跳躍し着地する。
距離にして20メートルは優にあった。
「…どういうつもりです?
それが、生物兵器の筈だ…
気付いてない訳では、ないですよね…?」
極力言葉を選んで問い掛けるクロイツ。
だが、そんな彼に、ギャザリンは漆黒の長剣の切っ先を向ける。
その態度に、クロイツは動揺を通り越し敵意を覚えた。
「…何のつもりだ?」
殺しを任務とする彼の忠誠心が殺意に切り替わるのに、然したる間は無かった。
殺意の籠るクロイツの口調からは、敬語が消えていた。
「気が変わった。
こいつを殺す気は無い。
そして、お前達に渡すつもりも無い」
ギャザリンは簡潔に、明確な意思だけを告げる。
しかし、それで納得するクロイツではない。
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