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「任務を放棄すると!?
それは、明らかな反逆行為だ!
それでは貴方の立場が」
「立場?
そんなものに、俺は固執しちゃいない。
悪いが、抜けさせてもらう。
報告でも何でも、好きにすればいい。
但し…追えば全員殺すぞ?」
ギャザリンはそう言うと、後方に跳躍し森の中に消えて行った。
「隊長…
貴方は…っ!」
奥歯を噛み締めるものの、クロイツは追おうとはしなかった。
ギャザリンの冷酷さと実力を知るが故に。
他の騎士達も同様に動く事が出来ない。
これまで、ギャザリンの命令を従順にこなしてきたのだから。
今、『シーカー』の間で、指揮系統が成り立ってはいなかった。
レジスタンス側にとって、これは好機。
生き残っていた彼らは、アイコンタクトのみで三々五々、深い森に向け撤退して行く。
不測の事態、それも戦略と戦術に関してならば、個々が臨機応変な対応も出来ただろう。
だが、ギャザリンの裏切りという、彼らにとって有り得ない状況は、思考の範疇外にあった。
逃走するギャザリンと亜人達を目で追いながらも、彼らは途方に暮れるほか無かった。
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