445人が本棚に入れています
本棚に追加
/368ページ
森の中を、少ない動作で木々を避けながら駆けるギャザリン。
舗装などされていない樹海の中、一足で数メートル移動しながら疾駆していた。
常人に出来る事ではない。
ギャザリンに明確な目的地は無かった。
だから、現状で必要な2点に気を配っている。
『シーカー』の隊員は、戦闘技術はもちろんの事、索敵や探索などの、戦略的な能力も行使出来る。
既に彼らの索敵範囲からは逃れているが、その効果範囲は広い。
出来る限り距離を取る必要が在った。
そして、方角。
国の先槍である『シーカー』が、生物兵器である少女の命を狙ったのだ。
それは国そのものの意思と言っても過言ではない。
王都から出来るだけ離れる事も必要だった。
「辛くないか?」
ギャザリンは腕に抱く少女を気に掛けていた。
まだ警戒を解いていない為、右手には長剣を握ったまま、左腕を少女の腰に当てて抱き上げ、駆け続ける。
不安定な体制に無理がかかっていないかと心配にもなる。
そんなギャザリンに、元気良く首を横に振って見せる少女。
最初のコメントを投稿しよう!