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「そうか」
他人を気に掛け、自然な笑みを浮かべる。
人間味の在る感情に、ギャザリン自身戸惑いと驚きが在った。
自分に華奢な身体を預ける少女を前に、それは不快なものではなくて。
初めての慈愛を胸に、ギャザリンは樹海の中を駆け抜ける。
暫し速度を緩めず走り続けていると、前方に幾つかの生体反応がある事に気付く。
「『テラー』か…
さすがに迂回するのも面倒だな。
…しっかり掴まっていろ」
ギャザリンの首に回していた手が、僅かに力を増す。
『テラー』とは、この世界『ティア』に順応する為に特異な進化を遂げた、野生動物を指す。
魔素は、この世界『ティア』の大地から溢れ、大気と混ざり合う。
大地に根差す植物は、魔素を取り込む事で成長を促進させ、それを口にする草食の『テラー』はそれごと取り入れる。
肉食の『テラー』は、その草食類を捕食する事で魔素を間接的に取り入れ、自身の生命力へと還元する。
新たな世界は、新たな生態系によって成り立っていた。
魔素の影響を受け、『テラー』の進化は早い。
適応力と、更なる捕食力を身に付けるべく、日増しに強靭さを増していくのだ。
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