強襲のドラギオン

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だからなんだと、ギャザリンは理解した。 自分を前に、あんな笑顔を浮かべる者などいなかった。 国の者は愛想を振り撒き、敵となるものは憎悪と恐怖を浮かべる。 それが当然で、自分の運命だと決め付けていた。 でも、心の奥底では求めていたのかもしれない。 エクストラの様な存在を。 その事に気付いたから、自分は刃を振るえなかったのだと。 「その夢では、この先に何があるかも見れたのか?」 ギャザリンは敢えて、微妙に外れた質問をした。 その問いに、エクストラは首を横に振って見せる。 「ううん。 いつも見ていたのは、あたしに手を差し伸べてくれる姿と、向けてくれる、優しい笑顔だけ。  …あたしは、貴方を信じてる。  貴方と居たい」 すがる様な眼差しは、強くギャザリンを求めていた。 「…俺は、これまで破壊しか生まなかった。 お前の夢の様に、いつも笑っていられる訳がない。 幻滅させる事だってあるだろう。  それでも、いいのか?」 エクストラの瞳には全くブレが無く、何度も頷く姿から、迷いは感じられなかった。 「…分かった。 お前が望む限り、俺の傍に居ろ」 “居て欲しい” ギャザリンは心の内でそう呟き、 「うん。  ずっと傍に居る」 エクストラは抱擁と共に、誓いの言葉を発する。 出会って僅か数時間しか経過していない。 だが、互いに必要な存在で、愛しかった。 深い闇の中で、2人は明日を誓い合った。
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