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「ギャザリンは、今の世界は嫌い?」
見透かしたかの様な言葉。
「今の世界はあまりに不完全だ。
どこも内外の脅威に晒され、他者を切り捨てる事でしか、国を維持出来ない。
俺もまた、そんな歪みの中の1つだ。
自分の行動に何の疑いも持たず、ただ…命ぜられるままに」
あのまま任務をこなしていれば、こうして今を見据え、過去を顧みる事も無かっただろう。
全ては、エクストラとの邂逅によって。
「それは、言い訳のつもりか?」
唐突に、大気を震わせる声。
存在感を際立たせた男声を発した人物が、川の向こう岸に居た。
警戒心の弛んでいた今、声を聞くまでいつの間にか現れていた存在に、気が付かなかった。
その者は、人間には到底見えない。
人語を介する事から、恐らくは亜人。
「まさか、本当に国を裏切り、こんな場所に居ようとはな」
皮膚は硬い鎧にさえ見えた。
頭部は先に戦ったガルヴォルフよりも先端が更に尖り、金属質の角は、頭頂から後部に向かって伸びている。
体格は、優にギャザリンより二回りは大きく、背後に伸びる尾の形状は、外骨格に包まれているのかと見まごう程に鋭利だった。
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