445人が本棚に入れています
本棚に追加
/368ページ
重厚なガントレットから覗く手には、刃が幅広の槍が握られていた。
「『ドラギオン』…?」
「そんな名で呼ぶな!
私達はヴァルナの民だ!
人間の物差しで、誇りある私達を侮辱するな!」
ギャザリンの発した一言に、怒りを露にする存在。
人間が名付けた種族、『ドラギオン』は、この世界の最強種である『ヴァナフィクサー』の血を受け継ぐとされている。
竜種と呼ばれる『ヴァナフィクサー』は、空気中の魔素を本能的に集める為、彼らは特異な魔法を駆使するという。
「覚えているか?
いや、忘れたとは言わせない…
ヴァルナの民は、貴様らに滅ぼされたんだからな!」
憤怒のエメラルドの眼光を、ギャザリンは正面から見据える。
「覚えているよ。
倒滅を行ったのは『シーカー』だ。
俺が率いていた。
過去最強の部族だったよ」
「『ヴァナフィクサー』に次ぐ私達が、人間に遅れを取るなど有り得なかった。
貴様の存在さえ無ければな…」
歯を軋ませ、槍を握る手に力が籠る。
「貴様をこの手で打ち砕く機会を待ち侘びた。
今なら、私の槍が貴様に届く!」
豪槍を、眼前に構える。
最初のコメントを投稿しよう!