445人が本棚に入れています
本棚に追加
/368ページ
「…ん?
何だ?」
狼の血を色濃く受けているだろう亜人が異質な空気を察知する。
視覚、聴覚、嗅覚を駆使して辺りを見渡す。
常人より遥かに発達した感覚を持ってしても、自分のいる遺跡前の空間から先を感じ取れない。
逆にそれが、異常事態を知らせていた。
「おい…
これは…」
「ああ。
何かおかしい」
周囲の亜人達も気付き始めたようだ。
既に腰の剣を引き抜いている者さえいる。
遺跡前の広場で野営していた亜人達が警戒を強める。
「アンナ。
中に非難してろ。
非戦闘員は、2番ゲートから待避だ」
「え…?」
「早く!」
「う、うん!
分かった!」
狼の亜人の言葉に、獣の耳と尻尾を持つ若い女性が応え、慌てて遺跡の鋼鉄の扉へ駆け出す。
瞬間、辺りが暗くなってゆく。
「嘘だろ!?」
誰かが声を震わせる。
「まずい…
『シーカー』だ!
皆逃げろ!」
頭に左右一対の角を持つ男が叫ぶ。
最初のコメントを投稿しよう!