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「ねぇ、ギャザリン…」
「ん…?」
エクストラとギャザリンは、深い樹海を抜け、広い湖畔にたどり着いていた。
相当の距離を稼いだ為、追っ手の心配は最早無いだろう。
「あたし、ギャザリンの名前が欲しいな」
辺りの景色を鏡の様に返す、美しい湖面を見詰めていたエクストラが、不意にギャザリンの手に触れる。
「え?」
「あたし、ギャザリンの…シルバーツっていう名前が欲しい。
えっと、その…
家族は、同じ姓を名乗るって…聞いたから…」
気恥ずかしそうに俯く。
ギャザリンは、そんなエクストラの横顔をまじまじと見詰めた。
家族。
それを、ギャザリンも知らなかった。
「…俺は、それがどういうものか知らない。
物心付いた時には、『シーカー』に入る為の英才教育を受けていた。
俺は…
人を殺す手段しか知らなかった」
ポツリポツリと、ギャザリンは己れの過去を顧み、語り出す。
「だから、そうして振る舞う事に、疑念は無かった。
お前に会うまでは。
だが…」
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