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四月十三日。
やや年期はあるがこれといって特徴のない普通の家の一室。
ベッドの上でいつも通りの時間に目を覚ました少年は、顔の横にあった真新しい携帯電話の時間を見た。
「げ!遅刻だぁ」
そう言うと、急いでベッドから飛び降り、微妙にそうだとわかる寝癖を直し、入学したてでまだ新しい制服を着て学校へ向かう。
自転車を凄い速さで乗りこなし、〇〇高等学校の門をくぐり自転車小屋へ行く。
「ちぇ、やっぱ間に合わなかったか」
先程も言ったが、これがいつも通りある。
〔はぁ、どーせまた先生に叱られて…〕
そう考えてノロノロと歩いている間に何気なく目を閉じる。
〔ふ、そんなシーンが目に浮かぶ………ん?〕
どうせああなる。どうせこうなる。
と、先生に叱られるシーンを想像したつもりが、なぜか彼の頭には自分が既に席に着いていて、先生が遅れて来るというシーンが描かれていた。
〔…まぁそーだったらいいけどな〕
そんなことを思いながらも一年C組の教室に入り、頭を下げながらよそよそと目線だけ教卓に向ける。
〔あら?ラッキー!先生いないじゃん〕
そして後ろの方にある自分の席に座る。
「おう雄也(ゆうや)!今日はついてるな」
一つ前の席の友人がニヤけながら言ってきた。
そのとき教室のドアが開き、担任の先生が慌てて入ってきた。
先生「すまない。朝礼が長くなってしまってな…お、初野(はつの)!今日は遅刻しなかったな」
この先生の言葉にすかさず先程の友人がツッコミを入れる。
「いやいや、先生がいつも通り来てたら雄也もいつも通り遅刻でしたよ!」
この会話のやりとりでわかったであろう主人公の名前は初野雄也という。
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