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モノクロの一松模様の床に少年は一人立っていた。
燃え盛る炎色の頭を抱え、同色の目を怯えに見開いて。
彼から数歩離れた場所を、人壁が取り囲む。目が回っているのか、彼らの顔はぐるぐる巡る。
──君は炎魔法の神童だ
──名も無き貴族の血を引くらしい
──あれが北の長、カーライト一族
──さすが赤い獅子譲りの腕前ですね
飛び交わされる、虚しいほど空っぽの言葉。
耳を塞いでいるのに、言葉は指をすり抜け、脳髄に直接届いた。
「フレイ、お前は優れた力量を持っている。それ故、利用したがる輩もいるわけだ」
兄の分析はあくまで冷徹に。
「相手はお前の立場を使いたいだけなんだぜ?」
親友の皮肉は労りを見せ。
「私も貴方も、結局ただの道具なんだわ」
幼なじみの嘆きは悲しく響く。
唐突に周囲は炎上し、視界は赤一色に染まった。
「ああ、そうか。貴様、器だな?」
炎の海の向こうで語りかけるのは、人成らざるもの。
「それは貴様が一番知っているのではないか?」
メスのような言葉の群れはどこまでも正確に心を抉る。
「感情が走る時、貴様以外の意思を感じたことはないか?
凡人より消費する質とは言え、養分を過剰に摂取することはないか?
他人の顔色ばかり伺い、自身の意思を希薄に感じたことはないか?」
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