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個室で用も無いのに座っていると、トイレのドアが開き誰かが入ってきた。
『全くさぁ、あの井上見てるとイラッとくるのよねぇ』
『あ、判る。舌ったらずなあの喋り方といい、いつまでも薫、薫って、貴女一体いくつなのかしら?って感じ』
この声は事務員の佐藤京子と川浦早紀じゃないかと思われた。
薫の話をするふたりが現れ、出るに出られなくなった。
『くねくねして、いっつも男を意識してるっつーの?』
『薫、また叱られちゃいましたぁ~』
『ちょ、マジ似てる』
うん、確かに今のは似てた。
つーか、あんたら何しにここに来てるんだ?
そう言うアタシもなんだけど……。
『なんかさ、仕事もたいした出来ないのに、甘えるのだけ上手な女って大っ嫌い』
『井上の出してくる発注書も間違いばかりでさ、いつになったら仕事出来るようになるわけ?』
そう、そこなのよ。アタシの教え方が悪いのかしら。貴女達には苦労をかけるわね。
『判る~。でもさ、いつも井上って伊東さんとつるんでるじゃない?』
えっ? いやいや、つるんでる訳じゃないから。
勝手にくっついてくるだけだから。
『そう、伊東さんてさ怖いじゃん。だからさ、井上に何か言おうもんなら睨み効かせてきそうで怖いんだよね。あ、ちょっとその口紅新色?』
どうやら化粧直しをしているってわけね。
『この間買ったんだぁ。ねぇ、伊東さんてさ、もう31でしょ? いつまで会社にいるんだろうね。もうあの歳で独身で残ってるの伊東さんしかいないんじゃない?』
『婚カツしてんのかな?』
してませんけど、何か?
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