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『いや、してないと思うな。仕事が恋人だからっ!とか言いそうじゃない?』
『いやー、ウケるぅ。絶対言うよそれ。結婚出来ない女の常套句だから』
大笑いをするふたりのうち佐藤京子が目をむいた。
個室のドアが思いきり開いたもんだから?
いやいや、アタシがそこから出てきたからよ。
隣で笑っていた川浦早紀も固まっていた。
トイレの大きな鏡にはふたりの後ろに腰に手を当て立つアタシも写っていた。
『邪魔っ』
『は、はいっ』
手を洗うアタシを両側で息をひそめ見るふたり。
『あ、あの……』
『そうなのよ~。貴女達よくアタシの事判ってるじゃない。
アタシったら仕事が恋人なのよ。この先もずーっと会社にいるから宜しくっ!』
トイレから出てフロアに戻る。
全く、ピーチクパーチクと人の事あれこれ言ってる暇あったら仕事しなさいって。
『先輩、何処行ってたんですかぁ。薫心配しちゃいましたぁ。何も言わずに先輩いなくなっちゃうからぁ』
『あのね、人の心配よりも自分の心配しなさい。
入社して2年、もう一人前に仕事出来てて当たり前なのよ』
『先輩、薫の事心配してくれているんですかぁ?大丈夫ですよぉ。薫は結婚までの腰掛けですからぁ。夢は奥様になる事なんですぅ。先輩とは違うんですぅ』
キャッと言って頬を両手で挟みくねくねする薫を見て、大きな溜め息が出た。
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