甘え上手

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  『え~、ホントですかぁ。薫、一度その店に行ってみたいんですぅ』     相変わらず仕事もせず、男性社員と喋っている薫を見ていた。     鎖骨のあたりまである髪は緩くパーマをかけてフワフワとしていて栗色に輝いている。   膝丈のスカートから真っ直ぐ伸びた足は細く、足首もキュッと締まっていた。   爪の先にまで手入れを怠らないようで、ネイルはいつも綺麗だ。   誰かと話す時、ちょっとだけ首を傾げる仕草が男達には堪らなく可愛く、そして女達には堪らなく憎たらしく見えるらしい。   顔も決して悪くない。   ぱっちりとした二重の大きな目。     うん。確かに可愛い。     『えぇ、そこの場所って薫、方向音痴だから行けないかもしれなぁい』     あ、首を傾げた。     あの子って、どの場面でどうすれば自分が可愛く相手に映るかを知っているなと思った。     でも、女のアタシが見ても可愛く見える。     『こうかしら? もうちょっと?』   口の中で呟きながら首を傾げてみた。     パソコンの向こうから後輩社員がこちらを見た。     『伊東さん、肩凝りですか? いい貼り薬ありますよ』     アタシの場合はこれだからっ。    首を左右に豪快に振るとボキボキと音を立てた。     『山崎さん、その貼り薬貰えるかしら? かなり凝ってるみたい』  
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