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『麻衣さん、それ美味しそうだね。僕にも一口。あ~ん』
そう言って目の前の男が鳥のヒナのように口を開けている。
山川太郎。24歳。
アタシより7歳下のデパート勤務の男。
アタシの勤める会社の後輩の友達でもある。
休日の今日、ショッピングに付き合わされ、昼を少し過ぎた今、ランチを共にしている。
『麻衣さん、あ~ん』
ランチを一緒にするといつもこれだ。
人の食べている物を必ず一口欲しがる。
何が「あ~ん」だ!
子供じゃあるまいし、一人で食えないのか。
『ほら早く、あ~ん』
『はい、つーかもっと口開けなさいよ。そんなんじゃ入らないでしょがっ』
『へへっ。麻衣さんに怒られちゃった』
怒られて喜ぶのって、どうかしちゃってんじゃないの?
普通ならムッと来ないか?
アタシなら来る。頭に来ちゃう。
アタシったら……
なんで……
こんなのと……
一緒にいるんだろ?
知り合ってそろそろ半年になろうとしているのだが、今ひとつそこが判らない。
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