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この店を出て2次会へと場所を移す事になり、男性社員のひとりが予約を入れておいた店へと行く事になった。
『伊東くん、さっきはご苦労さんだったな。下の者達の事は君がいれば大丈夫そうだな。安心だ』
『いえ、とんでもない。あ、部長、アタシ2次会欠席でお願いします』
『ん? 行かんのか?』
『ええ、明日ちょっとマネキンの様子を見に行こうと思ってて』
『そうか、君は本当に仕事熱心だ。みんなも君を見習ってもらいたいもんだな。じゃ、気をつけて帰りたまえ』
『はい、失礼いたします』
頭を下げ見送ると、アタシは時計を見た。
『ああ、バス行っちゃったな、タクシーで帰るか……』
バッグを肩にかけ直し歩き出したアタシに声がかかった。
『君!』
その声に振り向くと、さっきの居酒屋のカウンターにいた男性だった。
『あら……』
『みんなと一緒に行かないのか?』
『ええ、明日もちょっと仕事の真似ごとがあるから……』
そう笑って答えると彼が口を開いた。
『えーと、俺、坂本大輔っていうんだけど、日曜日にサッカー部の試合がうちの中学校のグランドであるんだが、見に来ないか?』
『中学校のグランドで?』
『ああ、△△中学校って知ってるかな?』
『あ! そこ、うちの近所。つーか、アタシ卒業生だから』
『ホントに! いやぁ奇遇だな。その中学校で勤務しているんだよ俺』
『何時から試合なんですか?』
『9時半からなんだ』
『そうですね、見に行ってみようかしら。誰でも入れます?』
『大丈夫。父兄も見に来ているから。あ、そういえば名前聞いてなかったな』
『あ、伊東麻衣です』
じゃ、日曜日に待ってると言って彼は手を振り反対側へと歩いて行った。
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