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『この書類に判をお願いします』
『伊東君、これマネキン入れるのはいいけど、それだけの物量入ってんだよね?』
『勿論、通常の1.5倍で入れましたが、何か?』
『いや、ならいい。伊東君の仕事のやり方には私は期待してるよ』
部長は目の前の書類に目を通し判を押してくれた。
デスクに戻ると、さっきと同じ場所で薫が立っていた。
『先輩……』
『ちょっと、その話はあと。もう仕事が始まってるのよ』
『じゃ、ランチの時に話しましょ、先輩』
そう言う薫に無言で頷いてアタシは目の前の受話器を持っていた。
『あ、毎度様です。〇〇製菓の伊東です。いつもお世話になっております。土曜日のマネキンの件なんですが……』
まだ隣で立っている薫にシッシッと手で追い払うとやっと自分のデスクに戻って行った。
『はい、試食については買い取りという事で……。はい、そのように手配致しますので宜しくお願い致します』
電話を切ったアタシは、バッグに手帳と携帯を入れ席を立った。
『先輩どこに行くんですかぁ?』
『は? 店舗よ店舗。週末マネキン入れる事で商品入れてんだから並べに行くに決まってるじゃないの』
『えぇ、じゃぁランチは?』
アタシは時計を見てから14時と答えた。
営業部に所属する人間に決まった昼休みは無い。
取れる時に取る。
場所は追って連絡する事として会社を出た。
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