年下の男

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  『麻衣さん、それもう食べないんですか? だったら、あ~ん』   アタシの残したハンバーグを見てヒナは言う。      『全部あげるから自分で食べなさい』   『えぇ。僕としては麻衣さんに食べさせてもらいたいんですけど』     こいつは子供の頃から母親にどんな風に育てられたんだろう?     とにかく甘える。   何かにつけ甘える。     何が我慢ならないかって、この常に甘える姿勢が許せない。     許せないなら会わなきゃいいのにと言いたいでしょ?   それはアタシもそう思ってるからっ。     それがアタシの性格上出来ない訳だ。     長女として生きてきた31年の中で身についてしまった「お姉さん気質」が、アタシに「放ったらかす事」を許さない。     頼られたり甘えたりされると、ついつい手を差し延べてしまう。     そんな自分が嫌で堪らないのに、気付くとやってしまう。     所謂、年下から好かれる女が板についている。     ここだけの話。   ホントはアタシも甘えたいのよ。   年上の男性にもたれて、甘えてみたい。     よしよしなんて、頭を撫でられたらきっと気持ちがいいんだろうなと夢を見ている。     『麻衣さん、全部残さず食べましたよ。よしよしってして下さい!』     いつ、アタシはそれをして貰えるのだろう……。     彼を見ていてそう思った。  
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