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薫は相変わらず男性社員とくねくねしながら話をしている。
『先輩は悪くないの。薫がいつもおバカさんだから叱られちゃうんですぅ』
耳に入ってくる薫の言葉の他に、視線がビシビシと突き刺さるのを感じた。
薫の傍で話を聞いていた男性社員が、まるで悪党を見るかのようにアタシを見ている。
その表情はアタシを憎んでいるのかと思う程の険しいものだった。
どういう事?
なんでアタシがあんな目で見られなきゃなんないかな。
『あのさ、君達も仕事をしたらどうかしら? 来週の勉強会の準備は終わってんのかな』
アタシが声を掛けると、こそこそと自分達のデスクに戻り、あたかもさっきから仕事してたかのような状態に持っていく。
全く、何しに会社に来てんだか。
今時の若い奴らって、なんでどいつもこいつもこんなんなの?
ああ、やだ。
まるでオバサン発言じゃないのよ。
まだ31歳なのに……。
『いや~ん、アタシったら』
薫のように握りこぶしを顎の下に当て、くねくねしてみた。
『伊東さん、どうしたんですか? トイレですか?』
向かいの席に座る後輩社員がこちらを見て言う。
『そうよ、アタシの場合はトイレですよ。はいはい』
行きたくもないのにトイレに行く羽目になった。
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