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ナオヤは校庭で横たわっていた。 あの部屋で、アイツに殴られ蹴られした時と同じ格好。 左を向いて頭を抱え、膝を丸めている。 狭いあの部屋とは違って、広い校庭ではナオヤがとても小さく、寂しく見える。 その傍らにタケルは立っていた。 「オヌシの言うとおり、人は自分勝手な生き物だろうさ。だがワシは…この世界を守るために命を投げ出した人間をたくさん知っている以上、オマエごときに汚いと否定されたくはない」 なおやは動かない。 「…まだ若い今のオヌシにその力は過ぎたるモノじゃ……完全には無理じゃがその力、封じさせてもらうぞ」 タケルはポケットからパチンコ玉サイズの蒼い石を出し、ナオヤの上に落とした。 「―土 火 水の力により 風の眷属を模する彼の力 いざないて封ずる―」 タケルの術式が始まると大気がザワついた。 だが大地の上に水で書いた魔方陣、八方に火の玉を有した陣には影響がない。 「―入りて封ずる!」 ナオヤの上に乗っていた石が、ナオヤの中へ消えていった。 タケルは何かを言い掛けるが、何も言わずその場を後にした。 「やはり勝てないわよね」 校舎の中から見えないはずの戦いを見ていた保健医は、携帯電話を取り出して電話をかけた。 「…モシモシ?私です。手続きを進めてください。…えぇ、ここまででしょう。これ以上は奴らが…はい、私も引き上げます。…よろしくお願いします」 「何をヨロシクなんじゃ?」 電話を切ったところで、タケルは保健医に声をかけた。 「…行動が早いのね?」 「落ち着きがないとよく怒られたもんじゃ」 「私に何か用かしら?」 「今更とぼけんでもよかろぅ…杉本達に力を与えたのはオヌシじゃな?」 「力?なんの話かしら?」 タケルは保健医に向かって左手をかざした。 ザアァァァァァァ! 手洗い場から水が吹き出し、触手のように保健医へ襲い掛かった。 保健医は何かをつぶやく。   パァン!バジュゥゥゥ!  廊下に水蒸気が立ちこめた。 「火属性…じゃが彩炎寺の炎とは異質…やはり言妙寺か」 「私は戦闘向きではないの。じゃあね」 保健医が何かをつぶやくと吹き上がった水が凍り付いた。 「ちぃっ!逃がすか!赤裂射!(せきれい)」 タケルは右手から赤光の矢を放つ。 矢は水蒸気の中へ消えていった。 「ちっ…逃がしたか」
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