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タケルから聞いて、ゆいは午後の授業中ずっと考えていた。
…親が自分に内緒で居なくなる…
想像もできない。
杉本ナオヤが、日々どんな生活を送って、どんな思いで転校していったのだろう。
同じ年、同じ教室にいた男の子が…
あんなに乱暴だったのは家で淋しかったのかもしれない。
母親ともうまくいってなかったのだろぅ。
自分に置き換えて想像してみたら、思わず目が潤んだ。
ゆいは今まで見えなかったものが見えてきた気がしていた。
放課後の教室。
「ねぇ萩原!みんなで祝勝会やろーよ!ぱぁーっとさ!」
クラスの半数以上がその会に参加するらしい。
「わたし…ゴメン、用事があるんだ」
「そっかぁ。委員長に仕切ってもらおうかと思ってたけど、ま、仕方ないか!」
バイバーイと別れて教室を出て、ゆいは口を塞ぎながらつぶやいた。
「…何か…キモチワルイ…」
――――――――
「アイツ、荷台なんかでいいのか?」
「本人がいいって言うんだからいいんじゃない?ま、一人にもなりたいだろうし」
運転手と怪我をした女はトラックに乗り込み、走らせた。
ナオヤはトラックの荷台で、荷物に囲まれて仰向けに寝ている。
本来なら教室の机に拘束されてる時間に、ドコへ向かうか判らない車に乗っているのだ。
あの日の夜、左腕を火傷した保健医がナオヤを訪ねてきて、ナオヤを組織に誘った。
裏の世界
異能力者の存在
【虚空蔵】の存在
保健医の組織がナオヤの後見人となり、ナオヤは正式に組織の一員となった。
まだ名も教えてもらえないその組織。言妙寺家という【虚空蔵】の一派と言うことだけ聞いた。
ガタガタと揺られながら宙を見つめ、今までのコトを思い出す。
ふと、左手首を見る。
保健医に書かれたマークの真ん中に、タケルに力を封じられた石が埋まり、かすかに蒼い光を発していた。
「……………」
目を閉じたナオヤの頬を涙がつたう。
ナオヤを乗せたトラックは北へ向かってスピードを上げた。
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