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肌寒い朝。 乾いた空に澄んだ空気。 制服姿の少女は、高級住宅の玄関を開け、静かにその世界へ足を踏み出した。 「行ってまいります。今日は委員会があるから少し遅くなると思います」 「行ってらっしゃいませ。お嬢様」 執事と数人のメイドに送り出され、肩に掛かった黒髪をなびかせながら、しずしずと自宅をあとにした。 自宅から見えないところまで来ると、彼女の雰囲気はため息一つとともに切り替わる。 横道から制服を着くずした今時の女子高生が二人、彼女の前に現れた。 「ヨーコ姉さん!おはようございます!」 二人は体育会系の、腰を90度に折り曲げて頭を下げた。 「オハヨ。てか姉さんって辞めてくんない?誰かに見られたらアタシのイメージ壊れるじゃない」 「ス、スミマセン…」 「てかアンタ達もよく続くわねぇ。アタシに付き合うことないのに」 「いゃ!姉さんの身に何かあったら大変ですから」 二人は陽子を真ん中に左右を歩く。 「やめてよ縁起でもない…でも仮に、アタシに勝てる人、いると思う?」 左右の二人は揃って顔を振った。 「いぇいぇ!剣道・空手・合気道の有段者で、全国大会にも行ってる姉さんに勝てるヤツなんて…」 と歩いてる三人の視界に、普段とは違う光景が映った。 ボロボロの汚い子供が、廃屋の前に座っている。 気の抜けた、ボォーっとした顔で廃屋を見つめる少年に、左右を歩く二人は顔をしかめた。 「おはよう。ボクどうしたの?」 あぁぁ…と、止める素振りの二人を気にせず、陽子は話し掛けていた。
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