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彼は子供用の携帯を取出し、電話を掛けた。
「…あ、もしもし?そちらで管理している霧ケ丘二丁目の家の件なのだが…分かるものはいらっしゃるか?……忙しいところ申し訳ない。霧ケ丘二丁目にある古い家なのじゃが…そう、もう長いこと放置しておりますのぅ…購入を検討しておりましての、中に入って見させてもろていいじゃろか?…ん?検討しておるのはわしじゃが?…もしも~し?…」
携帯をきった。
「うぬぅ…いたずらなどと言いおって。もう知らん!勝手に入るぞ!」
彼が玄関のノブをまわすとドアが開いた。
玄関で靴を脱ぎ、畳のある居間へ足を踏み入れる。古い家独特のカビ臭が鼻をくすぐる。
見上げると、黒く汚れた天井に無数の手形が模様のように見える。
「これは激しいのぅ。さっさと終わらすとするか」
彼は左手に持っていたこけしを、部屋の真ん中へ立て置き、正座した。
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