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「ちょっと。ちょっとあなたたちぃ!」
拓真が声を掛けるが3人はギュウギュウとじゃれ合っている。
右隣の小さいヤツは、口をぱくぱくさせているが言葉になっていない。
「れんふぅん…」
「なっさけない顔ですね。くじ運悪いし、本物のヘタレですよ」
拓真は席を立って慧に飛びついた。
「さ~とる。ギュウして下さい」
拓真の中で何かが弾けた。
ニコッとした笑顔と、お得意の仔犬のようなウルウル瞳も添えてみる。
慧は拓真に可愛い顔で見つめられてドキドキしている。
「漣くん。あの席を譲ってあげますよ」
拓真は慧に抱きついたまま自分の席を指差す。
「ヘタレさんの隣ですよ。嬉しいでしょ~!」
拓真の声で我に返った秀人は泣きそうな顔で漣を見つめる。
漣は拓真と秀人を交互に見て、自分の机に覆い被さった。
「ヤ~ダ!ココがいい!慧くんと有栖川くんにいっぱいギュウしてもらうんだ!」
「れんふぅぅぅん」
秀人は崩れ落ちた。
「ナニ言ってんだよ。離れなさい」
拓真は漣を机から引き離そうとするが、漣は必死に机にしがみつく。
「ヤダ!ヤダ!慧くん助けてえ!」
叫ぶ漣と諦めない拓真。
慧はふにゃっと笑いながら2人を眺める。
「君たち、静かにしなさい!」
東山だ。
「騒ぎたいのなら休み時間にしなさい。新納君は席に戻って」
拓真はしぶしぶ席に戻る。
漣は勝ち誇ったように拓真に向けてピースをした。
漣くん。
その席は必ず取り返してみせますよ。
拓真の口の端が上がりニイっと笑った。
東山は呆れた顔で漣を見た。
「茉森君。そういう元気は入学式で見せて欲しかったですね」
「すみません」
新学期早々注意を受け、漣はシュンとなってしまった。
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