新生活

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掃除が始まった。 秀人は小学校の時のように漣の机を運ぼうとした。 「秀人くん。さっきの東山先生の話覚えてる?」 「ああ。先生の話は気にするな。高校卒業するまで一緒なんだしさ。今まで通り二人で頑張ろうよ」 「でも、それじゃあダメなんだよ。それにね、見てて」 漣は右手で車椅子を動かし、左手で机を持って後ろに下がった。 「漣くんスゴいじゃん!」 秀人は目を細めて微笑む。 「車椅子ってラクだよ。もっと早く車椅子にすれば良かったね」 「カストルとポルックスが聞いたら泣くよ」 秀人は車椅子のアームレストについているブタのストラップに目をやる。 「そうだね。たくさんお世話になったのに可哀相だね」 掃除が終わると漣の机も戻されていた。 秀人は目を潤ませた、。 拓真は秀人の涙を見逃さなかった。 「東山先生のトコに行ってくるね。秀人くん、教室で待っててくれる?」 「うん。気をつけてな!」 秀人は廊下まで出て漣を見送る。 まるで我が子を送り出す母親の心境だ。 「子離れ出来ないダメ親ですね」 拓真が声を掛けた。 「さっき、あなた泣いてましたよね?」 「あ…見てた?」 「まあね」 慧と元気も加わった。
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