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「話そうかどうしようか迷ってたんだけど…漣くんね…」
「ムリに話さなくてもいいよ」
慧は話し倦ねる秀人を気遣う。
「いや。やっぱり話しておくよ。漣くんね、小学校でイジメを受けてたんだ。1年の時からイジメられてたみたいなんだけど、俺が転校してきた時には、クラス全員から無視されてた。ロボットの足ってからかわれて倒されたり、キモイとか、汚いとか、近付いたら病気がうつるし、口をきけば死ぬって噂されて、ちょっと触れただけで『消毒してくる』って言われたこともあったんだ」
「ナニそれ!ヒドすぎる!」
元気の学校にはイジメはなかった。
存在は知っていたが、秀人の話す内容は想像以上に陰湿で激しい怒りを覚えた。
「で、涙のわけは?」
拓真が冷静に尋ねる。
「汚いからって、掃除当番が漣くんの机だけ運ばないんだよ」
「先生は?」
「気づかないフリをしてた。卒業まで一言もイジメについて話さなかったしサイテーだよ。それなのに漣くんったらさ、絶対にイジメから逃げなかったんだ。逃げたりしたら、お母さんが悲しむからって。漣くんを、あんな身体に産んでごめんなさいって、お母さんが自分を責めてしまうからって。だから逃げないって言ったんだよ」
あの日を思い出して大粒の涙を流す秀人。
元気は入試の日に見せた漣の瞳が寂しそうだったことを思い出した。
「なんか…漣くんスゴく大変だったんだね。俺、絶対に漣くんを泣かせたりしないよ」
元気は涙を拭い強く決意をした。
「そうだね。おいらも漣くんと仲良くしたいな」
慧が優しく微笑んだ。
「俺もです。何をすればいいか、ヘタレさん教えて下さいね」
拓真のわだかまりが消えていった。
「ありがとう。その気持ちが嬉しいと思うよ。ずっと一人で友達がいなかったから、放課後に遊んだことも無かったんだって。普通に喋って遊んで。それでいいんじゃないかな」
「普通がイチバンなんだね」
慧がふにゃっと笑った。
最高の仲間に出会えた。
秀人はこの時に直感した。
5人でなら、新しい明日に進んでいける。
何があっても乗り越えていける。
出会うべくして5人は出会った。
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