1000人が本棚に入れています
本棚に追加
「東山先生と何を話したのか聞かないんだね」
「教えてくれないからだよ」
漣が話したいと思った時に聞こう。
教室を出た時からそう考えていた。
「入学式の後、『何の為にこの学校に来たのか考えなさい』って宿題を出された。でも、まだ答えが見つからないんだ」
「何の為か…。俺も考えたことないわ」
イギリスにいた時に父親から話を持ち出され、帰国すれば受験するものと疑わなかった。
「だけどね、秀人くん。何がやりたいのか。その為に何をすれば良いのか。それが見つけられそうな気がするんだ。だから東山先生にそう言ってきた」
明るい顔の漣に迷いは見えない。
幼く見える顔立ちだが、時折、大人っぽい表情を見せる。
今の漣の表情は未来を見据えている。
秀人にはそう見えた。
「そうか。これから6年もこの学校にいるんだ。ゆっくり見つければいいさ」
「もっと早く見つけるよ。俺も前に進まなきゃね」
「そうだな」
漣が愛おしい。
おもいっきり抱きしめたい。
誰にも渡したくない…。
誰にも…。
「漣くん。俺…」
「なに?」
「いや。なんでもない」
「ヘンな秀人くん」
恋なのか友情なのか。
秀人にも理解できないこの感情。
甘くてすっぱくて時に苦い。
それは…。
恋なのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!