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東山が入ってきた。
「起立」
日直が号令を掛けた。
「おはようございます」
気持ちの良い朝になるハズだった…。
「茉森君。挨拶はきちんとやりましょうね」
「やってます」
まだ機嫌が悪い。
「できていません。日直さんが号令を掛けたら…」
「立てません!」
東山の言葉を遮り大きな声で叫んだ。
「茉森君。どうしました?」
「立てません…」
漣はもう一度繰り返した。
拓真は秀人の顔を見た。
秀人も頭を傾げている。
お互いに漣が不機嫌にしている理由がさっぱり分からない。
「漣くん。どこか痛いの?」
「……」
慧の問い掛けにも返事をしない。
慧はすがるように東山を見る。
東山も思案顔だ。
「茉森君。立ちなさいとは言ってませんよ。号令が掛かったら、背筋を伸ばして姿勢を正して下さい。それは立っている皆さんも同じです。挨拶は形式でするものではありません。心を伝えてこそ挨拶です。朝の挨拶は、今日も1日頑張りますと言う気持ちでやりましょう。そして、授業の始まりと終わりの挨拶は、教えて下さる先生方への感謝を伝えて下さい。分かりましたか?」
「はい…」
「それでは、もう一度、挨拶をしましょう」
今度は漣も背筋を伸ばした。
「今日から授業が始まります。しっかり勉強して下さいね」
朝のホームルームが終わり東山が出て行った。
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