ギュウしてっ!

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「まーまーまーまー。有栖川さんもお金持ってないみたいですし、今日は学食に行きましょう。ヘタレさんも行きますよ」 「その前に。タク。あれあれ」 「あ。そうですね」 慧の呼び掛けに応じ、拓真は漣を挟んで慧の反対側に立った。 「せーの!」 「漣く~ん!」 慧と拓真が両側から漣を抱きしめた。 「今日はまだ、ギュウしてなかったからね」 慧が優しく囁く。 「俺も毎日ギュウしてあげますよ」 拓真も笑っている。 「サトくんもタクくんもありがと~」 「ズルい!俺も~!」 秀人は正面から漣に抱きついた。 「秀人くん。イタイよ」 漣は嬉しそうに顔をほころばせる。 「ダメぇ!俺がギュウしてあげるの!」 元気が駆け寄って3人を払いのけ、漣をギュッと抱きしめた。 「漣くん…。漣くん。漣くん」 一層強く抱きしめ漣の名を呼び続ける。 「有栖川くん。大好きだよ」 やっと漣の顔に笑顔が戻った。 照れくさそうに元気を見つめて頬を紅く染める。 「有栖川くんにギュウしてもらいたかったんだ。ごめんね」 「なんだ。そんなこと」 -ギュルギュルギュルギュル~~ 元気のお腹が鳴った。 「もお!有栖川くんっ!ギュルギュルじゃなくてギュウだよ!!」 「あはは。ごめんね。学食行こっか」 「うん」 今日一番の最高の笑顔だ。
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